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次の瞬間、ガチャリと音を立ててドアが開く。
「ゴメン、綿貫先生いる?」
その言葉と共に入ってきたのは、先程から首を長くして待っていた センター長その人だった。
「どうしました?」
「さっき運ばれてきたおばあちゃん、とりあえず小康状態に入ったから、引き続き、様子見といてくれる?」
「分かりました。行ってきます!」
指示を受けると、綿貫医師は颯爽とした足取りで部屋を出て行く。
それを見送ると、センター長は私の方を見た。
「で、槙(まき)さんは、ハンコが欲しいんだっけ?どの書類?」
そう言うと、彼は胸元のポケットから印鑑を取り出し、書類を催促する。
私が慌てて報告書を差し出すと、彼は自分の不手際に気付き「ああ~」と落胆の声を上げた。
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