Dark clouds

16/17
692人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
 次の瞬間、ガチャリと音を立ててドアが開く。 「ゴメン、綿貫先生いる?」  その言葉と共に入ってきたのは、先程から首を長くして待っていた センター長その人だった。 「どうしました?」 「さっき運ばれてきたおばあちゃん、とりあえず小康状態に入ったから、引き続き、様子見といてくれる?」 「分かりました。行ってきます!」  指示を受けると、綿貫医師は颯爽とした足取りで部屋を出て行く。  それを見送ると、センター長は私の方を見た。 「で、槙(まき)さんは、ハンコが欲しいんだっけ?どの書類?」  そう言うと、彼は胸元のポケットから印鑑を取り出し、書類を催促する。  私が慌てて報告書を差し出すと、彼は自分の不手際に気付き「ああ~」と落胆の声を上げた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!