Storm

12/12
692人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「それから、時間を気にされていたようなので教えておきますと、今は夕方の五時になります。福留(ふくどめ)さん、後で彼女のベッドを起こしてあげて下さいね」 「・・・はい」  満面の笑みでそう言われた看護師は、頬を僅かに赤くしている。恐らく、これは窓から差し込む西日のせいだけではないだろう。  ・・・作り物の笑顔に、価値ってあるのかしら  若干白けた気分で彼女を見るも、当の本人は それに気付かずベッド脇のレバーに手をかけている。呆れて海に視線を送るが、逆に疑問符の付いた表情を向けられた。 「知っているとは思いますが、横にナースコールがありますので、何かあったら呼んで下さい」  それだけ告げると、「では」と言って彼は看護師を引き連れて部屋を出て行く。   「あの、天然タラシ・・・」  誰もいなくなった部屋で、私が一人そう呟いたのは、言うまでもなかった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!