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スヅは、くくっと笑いながらタネあかししてくれた。 「まだ、教室半分の窓しか拭けとらんけどな・・・。 ほら、よく絞った雑巾で拭いた後、新聞紙でもう一度拭くんよ。そうすると綺麗になるんじゃって。」 そう言って、雑巾でひと拭きした後、もう片方の手に持った新聞紙の切れっ端で、ガラスの手垢を丁寧に拭き取った。 「見てみ! うっすい虹が見える。」 オレは窓に顔を近づけた。 思わず息を潜めて覗き込んでしまった。 窓ガラスに細かい虹が乗っかってる。 「うわ! ほんまじゃ! 虹が見える。すげっ」 「そう! りょーちんなら気付いてくれると思ったわ! 水拭きの水分が乾くまでのほんの短い間じゃけど、薄い虹が見えるんよ。 僕でも、虹がかけれるん!」 「スヅ、窓際の魔術師じゃな! わかった! これも、この窓も、スヅの作品なんね。」 スヅの目が輝いてオレのヒラメキに飛びついた。 「おう! そうで、そうで!! 僕の作品なん! 『虹の窓』!」 「この辺にスヅキってサイン入れとき。」 「いやじゃ。また、汚れるが。」 スヅが弾(はじ)けるみたいに笑った。 オレ、スヅのこういう顔見ると、すっごいウレシい。 .
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