36人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
スヅは、くくっと笑いながらタネあかししてくれた。
「まだ、教室半分の窓しか拭けとらんけどな・・・。
ほら、よく絞った雑巾で拭いた後、新聞紙でもう一度拭くんよ。そうすると綺麗になるんじゃって。」
そう言って、雑巾でひと拭きした後、もう片方の手に持った新聞紙の切れっ端で、ガラスの手垢を丁寧に拭き取った。
「見てみ!
うっすい虹が見える。」
オレは窓に顔を近づけた。
思わず息を潜めて覗き込んでしまった。
窓ガラスに細かい虹が乗っかってる。
「うわ! ほんまじゃ! 虹が見える。すげっ」
「そう!
りょーちんなら気付いてくれると思ったわ!
水拭きの水分が乾くまでのほんの短い間じゃけど、薄い虹が見えるんよ。
僕でも、虹がかけれるん!」
「スヅ、窓際の魔術師じゃな!
わかった!
これも、この窓も、スヅの作品なんね。」
スヅの目が輝いてオレのヒラメキに飛びついた。
「おう!
そうで、そうで!! 僕の作品なん!
『虹の窓』!」
「この辺にスヅキってサイン入れとき。」
「いやじゃ。また、汚れるが。」
スヅが弾(はじ)けるみたいに笑った。
オレ、スヅのこういう顔見ると、すっごいウレシい。
.
最初のコメントを投稿しよう!