36人が本棚に入れています
本棚に追加
オレの目の前に座っとるスヅ。
ベストの肩に目をやると、化繊が混じっているのか、小さく毛羽立ったニットの繊維も、虹を乗っけて輝いて。
頭に目をやると、つやつや軟(やわ)そうなスヅの髪の毛も虹を乗っけて輝いて。
授業中なんも忘れて目を奪われる。
オレ、まだ14年しか生きとらんし、
これから先のことなんて、何にも解らないのに、
これが、一生の内の特別な時間だってわかる。
オレ、今がシアワセなんだって解かる。
それが、なんでだか、知っとるん。
誰も教えてくれんでも、知っとるん。
オレ、スヅのこと、すきなんよ。
スヅのこと、考えると、
ふわふわ、くすぐったい、ステキな気持ちになる。
オレに不似合いなくらい、
そこらじゅう、
キレイなものでいっぱいになる。
オレが気づかんかっただけで、世界には、こんなステキな秘密がそこら中潜んでるって、スヅが教えてくれたんよ。
いつも後ろから眺めてる、その、スヅの細っこい背中は、壊れそうなんってセツなくなるから。
だから、実は大切にしないといけないイトオシイものなんだって、スヅが教えてくれたんよ。
オレ、生まれて初めて、こんなダイジなもん出来たん。
そう思うと何故だか目頭が、ぎゅううって痛んで。
ヘンなな。
オレ、この教室で、そんなこと教わっとるなんて。
「なんで寝ながら涙ぐんでんの?」
スヅの声に目を開ける。
涙が一粒零れた。
.
最初のコメントを投稿しよう!