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オレの目の前に座っとるスヅ。 ベストの肩に目をやると、化繊が混じっているのか、小さく毛羽立ったニットの繊維も、虹を乗っけて輝いて。 頭に目をやると、つやつや軟(やわ)そうなスヅの髪の毛も虹を乗っけて輝いて。 授業中なんも忘れて目を奪われる。 オレ、まだ14年しか生きとらんし、 これから先のことなんて、何にも解らないのに、 これが、一生の内の特別な時間だってわかる。 オレ、今がシアワセなんだって解かる。 それが、なんでだか、知っとるん。 誰も教えてくれんでも、知っとるん。 オレ、スヅのこと、すきなんよ。 スヅのこと、考えると、 ふわふわ、くすぐったい、ステキな気持ちになる。 オレに不似合いなくらい、 そこらじゅう、 キレイなものでいっぱいになる。 オレが気づかんかっただけで、世界には、こんなステキな秘密がそこら中潜んでるって、スヅが教えてくれたんよ。 いつも後ろから眺めてる、その、スヅの細っこい背中は、壊れそうなんってセツなくなるから。 だから、実は大切にしないといけないイトオシイものなんだって、スヅが教えてくれたんよ。 オレ、生まれて初めて、こんなダイジなもん出来たん。 そう思うと何故だか目頭が、ぎゅううって痛んで。 ヘンなな。 オレ、この教室で、そんなこと教わっとるなんて。 「なんで寝ながら涙ぐんでんの?」 スヅの声に目を開ける。 涙が一粒零れた。 .
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