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何度目かのデート、何度目になるか分からない水族館に行った時、また、彼女があの水槽の前で立ち止まる。昔は一人黙々と水槽を見ていた彼女だが、今は僕にウミウシの事を聞かせてくれる事が増えた。
「ウミウシの色って鮮やかでしょ」
「うん、鮮やかな海に住むから、あれが保護色になるんだよね」
「えぇ、私がウミウシを好きな理由。もし、みんながウミウシみたいに派手に......個性的に生きたら、それが鼻に付くような事もなくなる気がして」
「うん。そんな世界も面白いかもね」
海は不思議な人でもあり、そんな優しい人でもあった。僕は彼女のことと一緒にいつの間にか、ウミウシに詳しくなっていったが、それでも......
「私とウミウシは似てるの」
その意味だけは分かることがなかった。
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