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数日経って返事のない電話とメールに違和感を感じた。
さらに数日経って彼女のアパートが空き家になっているのを確認して、初めて僕は自分と彼女を繋ぐものが全てなくなってしまった事を知った。
とても悲しかった。突然いなくなった彼女に怒りは......なかったといえば嘘になるが、それ以上に、もう一度会いたいという気持ちが強かった。
翌日、会社を休んで彼女の大学へ行く。彼女はいなかった。
「ぅーん、個人情報だからねぇ......」
大学の講師は言葉を濁す。冷静に考えれば当然の反応だろう。そもそも、個人情報でなくても、縁を切られて乗り込んで来た男性にまともに取り合う人間なんているはずがない。これ以上は粘っても無駄かと内心諦めかけた時だった。
「もしかして、君は信二君かな?」
「えっ......あっ、はい」
面識のない初老の男性だった。
「ふむ、海さんから話は聞いているよ。あぁ、私は彼女のゼミの教諭をしていてね」
「!!それでしたら、彼女が今どうしているかっ!」
チャンスとばかりに前のめる僕に男性は首を振る。
「それでも立場上、個人情報は教えられないよ」
「そぅ......ですよね」
「それにしても、よくここまで来たものです。なかなかそこまで行動出来るものじゃない」
そう言って男性は職員テーブルに置かれた海空女子大学というパンフレットに目をやった。それを見て、僕も思わず苦笑する。確かに、女子大に乗り込んでまでどうにかしたいなんて、今までの人生でここまで何かのために行動した事はあまり思い出せない。
なんだか、それを思うと急に肩の力が抜ける気分だった。
「彼女にも言われましたが、僕はどうも節操がないらしいんです」
「節操!?くっ......ふふふ......いやいや、すまないね。彼女らしいというか、なんというか......君も大概だね」
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