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気になった私がゲームの話を振ると、渡瀬くんの瞳がにわかに光を帯びた。なんだか嬉しそうだ。
「これは、今から二十年前にゲームキッズっていうハードで発売されたゲームで、当時社会現象にまでなったRPG。漫画化アニメ化はもちろん、カードゲーム化もされ、ゲーム自体は重版に次ぐ重版。今でもシリーズが六世代目に突入し、販売累計は四兆円を超えるとまで言われた名作中の名作。今やってたこれはその初代のゲームだよ。ストーリー自体はそれほど長いものではないけど、そのコレクション性やPvPつまり対人戦闘の面白さで当時の子供たちでさえ何百時間とプレイする事が当たり前となっていたようなゲーム。しかし、このゲームの魅力はそれだけではなく、数々のプレイヤーを楽しませるバグが見つかった事にもある。インターネットが普及していない当時、ゲーム雑誌や噂などで広まった裏ワザやバグ。これらがこのゲームをやり込んだ人にスパイスとして適度に効いたという事もあるだろう。今でこそオンラインでバグの修正などができるものの、当時の売りっぱなしカセットは一度出たバグが直る事はない。そのバグというのも、実は開発者の――」
「渉? そろそろいいかな?」
語りに語る。渡瀬くんは所謂ゲーマーというやつで、今収入源としているものもゲームのプレイ動画投稿、ゲームレビューを載せたブログでの広告収入と、ゲーム中心の生活で収入を得ているらしい。実は私も渡瀬くんのブログも見ているし、スマートフォンゲームの攻略情報なんかもお世話になっていたりする。渡瀬くんを直接知らない大学の友達もゲームをする人ならば知っていて当たり前ってくらいの有名人。
「そ、それで渉くんは、なんで今そのゲームをやってるの?」
「歩美ちゃん……あんまり聞かないほうが良い。聞いたところでコイツの言っている事は理解できん」
「次の動画配信で、裏技なしの最速プレイを投稿しようとしているんだ。その予習にね。最短ルートを最速で――。俺は大体のゲームで最速プレイをしてるんだけど、このゲームだけはどうにも時間をかけたプレイしかした事がなくてね」
渡瀬くんは電源を入れ直すと、また新たにゲームを始めるみたいだった。最短ルートを最速で――それは渡瀬くんのゲーム攻略ブログのトップページにも書かれているキャッチコピーのようなもの。
「ど、どうして?」
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