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「まず、遺産の相続者は何人か教えてくれるかな? 相続の時には、遺産分割が最も揉めるんだ」
「えっと……おばあちゃんにはもう身寄りが私たちの家族だけだから、お父さんだけです」
「じゃあ次に、相続する遺産は六千万円を超えそうかな?」
六千万円という言葉を聞いた瞬間に目が飛び出るほど驚いた。両手を前に突き出してブンブンと振り否定する。
「そ、そんな多くないですよ! 家の土地とか全部合わせても、多くて一千万くらいだと思います。家も小さくてボロいからもっと少ないかも……。でも……」
でも――まだよく分からない問題がある。実はそれについても解決できたら――と言う期待も込めて相談に来た。
「遺書が……見つかったんです。自分が死んだ後に何を誰に渡すかっていう……」
法子さんはほう――と相槌を打つと興味深げに話を聞く姿勢を取ってくれる。隣では相変わらず興味が無いのか、ゲームに集中している渡瀬くん。
「一応持ってきたんですけど、見てくれますか?」
高校入学の頃から使っているベージュの肩掛けカバンの中からA4サイズの茶封筒を取り出した。中には細筆で達筆に文字がしたためられた半紙が入っている。
「これです」
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