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「ゆうじ・・・」 その名前に、思わず声が出てしまう。 「あ、はい。勇ましいに武士の士で、勇士」 ゆうじ、その名前に、忘れていたはずの過去が蘇った・・・一瞬だけだけど。 「勇士さん、ですね。華歩里・・・中華の華に歩む、里で、華歩里です」 大槻 勇士、そう名乗った彼の名前が本名なのかどうかはわからない。 でも、そんなことはどうでもいい。 「華歩里ちゃん。・・・タオルありがとう」 タオルを返して、部屋から出ていこうとした勇士さん。 そんな勇士さんを、私は思わず・・・ 「雨っ!!雨がやむまで雨宿りしていきませんか?外、ひどい土砂降りだし・・・」 ・・・なんて言っていた。 見ず知らずの男の人を家にあげた上に、名前まで教えて。 さらに、もっとここにいろ、なんて。 ・・・まるで、誘っているみたいじゃないか。 言ってからそう思った。
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