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そして、雨が小降りになったら・・・
「ありがとう、華歩里ちゃん。そろそろ行くね」
そう言って、あっさりと帰っていった勇士さん。
そんな勇士さんに、私は玄関にあったビニール傘を渡した。
「ビニール傘なんで返さなくても大丈夫なんで。まだ雨降るかもしれないし、持って行ってください」
いろんなことを話したけど、結局聞けなかった、さっきの理由。
相手が誰だかも、どうしてあんな雨の中放り出されたのかも、聞けなかった。
それともう一つ。
お互いに聞かなかった、連絡先。
この先、どこかで会うかもしれないし、もう2度と会わないかもしれない。
そもそも、勇士さんの言った名前や住む場所、会社名や年齢、全て本当かどうかなんてわからないんだから。
もしかしたら、全部嘘かもしれない。
それでも、私はこの先、勇士さんのことを忘れない、そう思った。
変な話だ、たった1時間と少し、話しただけの相手なのに。
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