第1章

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五年ぶりに彼女ができた。 彼女は大学病院で看護師をしている。丸顔でほのぼのした雰囲気の、ちょっと垢抜けない感じもする娘だ。だが、それこそ僕の求めるところなのだ。 僕は、自分よりちょっとでも彼女のほうがかっこいいとか優れているとか感じてしまうと、途端に萎縮してしまう。ものが言えなくなってしまうのだ。 にこにこしながらも僕をバカにして見下しているのではないか。こんな男となんで付き合ってるのかしら。目の前の彼女はそう感じているのではないか? つまらない男だと思われるのは絶対に嫌だ。そんな妄想を膨らませ、結果、フラれる前に自分から別れを切り出すこと数知れず。別れ話でも主導権は絶対握られたくないから、いつもいきなりだ。相手からすれば、理由も分からぬままサヨウナラということだ。
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