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十日後―――
「お…おめ……陸羽か?」
鍬を投げ出したまま、やつれた体で木にもたれ苦しそうに息をする男を見つけた茶々丸が、七星と二人で心配そうに側へと寄った。
「ちゃ…ちゃさ……それにナナさ…」
「どうしたんだ?目の下にはくまができてえれえ顔色は悪いし、それに痩せたんじゃ……」
「へへへ……どうってことねえ…暑さにちぃと参ってるだけだ」
目だけをギョロギョロと動かし、気味の悪い声で陸羽は笑う。
「暑さにって……大丈夫ですか?」
「ああ…ナナさん、大丈夫さ。んじゃ、しっかり働くとしよう。働いて働いて……甘い甘い蜜をいただくんだ。やめらんねえ…」
「甘い甘い蜜?それは何の……」
訊ねる茶々丸を押し返し、陸羽は鍬を杖がわりに畑へと向かった。
「へへへ……袋の奥に甘い甘い蜜があるんだ。あんな良い場所、一度知っちまったら……抜け出せるかよ…誰にも教えてやるもんか」
ブツブツと呟きながら、どんどん歩いていく。
「おっはよう、陸羽ぁ~!ねえ、今日も今からいい?」
畑でははちきれんばかりに艶やかな肌をした、妖しいまでの美しさで無邪気に笑う錦夜が手を振っている。
なんとか重い手を振り返し、陸羽は錦夜に笑顔を向けたまま、ごろりと仰向けにその場に倒れたんじゃ。
瞳孔の開いたその目には、その日の青空だけが映っていた。
「カメムシの中には、肉食のもんもおるんじゃ。普通は口から吸うんじゃがのう……中には、特殊な袋を持っとるもんもおるかもしれんのう。やめたくてもやめらんねえ、ハマったら這い上がれねえ捕虫袋を持った特殊なヤツがのう……」
□おわりんご□
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