お下がり

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 君の目に映る全てが欲しかった。  綺麗な景色、キラキラ輝くもの、君が愛するもの、全部欲しかった。  君が目にするそれらは全部僕が持っていないものだ。  反対に、僕が持っているものは君の中では存在しない。  流れる音楽、綺麗な声、歌うことの楽しさ。  君と僕は相容れない。  君には見えるものが僕には見えない。  僕に聞こえるものが君には聞こえない。  でも、君との会話は楽しかったよ。  指のぬくもりは今でも忘れない。    光で目を覚ます。  目を開けると今まで見たこともないものの山だった。  情報では聞いたことがあったが見るのは初めてだった。  医師を見る。  その顔は手術が成功したことを物語っていた。  何年も何年も待ったかいがあった。    ようやく。  ようやく、君の目に映る全てが僕のものになった。
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