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といったところで目が覚めた。いやあ、実にいい夢だった。実際に、こんなこと起こるわけないけど、俺はいい気分で目覚めることが出来た。
ひょっとして今日は、何かいいことがあるかもしれない。休みで用事もなかったが、お気に入りの服を着て街へと出掛けた。
夢のようにはいかないだろうけど、新しい出会いが待っている。そんな予感がしていた。
そして、鼻歌まじりで街を歩き、一時間ほど経った時、
「助けて下さい」
と声が聞こえてきたかと思うと、女が走ってきた。
これはまさか、昨夜見た夢と、同じシチュエーションではないか。
ということは、次に柄の悪い厳つい顔した男がやって来るはずだ。
「兄ちゃん。痛い目に遭いたくなかったら、その女をこっちへよこしな」
やっぱりだ。男の出て来るタイミングも台詞も、夢のまんまだ。どうやら俺は今、正夢を体験しているらしい。
そう思った俺は、夢の通りに女を背中に隠し、夢の通りに優しく女にこう言った。
「大丈夫。俺が守るから」
すると男は、夢の通りに声を荒らげ、
「兄ちゃん、あんまり格好つけ過ぎると大怪我するぜ」
と、夢の通りの台詞を吐きながらパンチを繰り出してきた。
俺は、夢の通りに持ち前の反射神経でそのパンチをかわした。そして、夢の通りに男の横っ面に強烈な右ストレートをお見舞いすると、男は夢の通りにがっくりとその場に倒れ込んだ。
だが、
「ありがとうございます」
と、感謝の言葉を述べた女の顔は、とてもブサイクだった。
俺はこの後の展開がすごく恐くなってしまったので、女を置いて走って逃げた。
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