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少し遠回りをして帰る事にした。海が見える海岸通りだ。
そこで私は、おもむろにバイクを止め、海に向かって走りだした。
理由はもちろん、ソフトクリームまみれのムスコを洗い流すためである。
はしゃぐふりをしながらムスコを洗った。時々、ワイフに手を振って、
「こっちこいよ」
と呼び掛けたが、当然の事ながら、無反応である。
帰宅した。我ながら、充実した一日だったと満足する。しかし、バイクを降りるとワイフがいないことに気付いた。
どうしたというのだ、風に飛ばされたのか。
あれほど、しっかり捕まっていろと言ったのに!
でも、まあいい。考えようによっては、これでよかったのだろう。どうせ遊びだったんだ。厄介払いができて、よかったというものだ。
さて、今から夕飯の準備をしよう。もちろん一人前だけ。
でも、この時の私は、自分が流した一粒の涙に気付かないふりをしていた。
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