0人が本棚に入れています
本棚に追加
だがそんなある日、智子が招かざる客を連れて帰って来てしまった。
そう、男である。俺という同棲相手がいながら、智子はいったい何を考えているのだろうか。
しかし智子は悪びれるそぶりもなく、いつものように「ただいまー」と言っていた。
俺は、戸惑いながらも智子の後ろにいる、いかにも軽薄そうな男を睨みつけたが、男は俺のことなど眼中にないようだ。
なぜだ。女に部屋に招かれて、その部屋に男がいたら、なんらかのリアクションがあるはずだ。
それとも、事前に智子から俺の存在を聞いていたというのか。
ではいったい、この男は何の目的で俺と智子の「愛の巣」へ足を踏み入れたというのだろうか。
わからない。
わからないまま智子とその男は、そのまま寝室へと消えて行った。俺もついて行こうしたが、寝室の手前で閉め出されてしまった。
扉の向こうから、今までに聞いたことがない、智子のなまめかしい声が聞こえる。俺は扉の前で、どうすることも出来ない。
俺に出来ることといえば「ニャー」と鳴くことくらいだった。
最初のコメントを投稿しよう!