ヒモのような存在

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「ただいまー」  そう言いながら、仕事から帰ってきた智子は俺に抱き着いて来た。 「お腹空いたでしょ。すぐ晩御飯の用意するからね」  そして、俺の空腹を察するように晩御飯の支度をはじめた。  俺が智子と一緒に暮すようになって、もうどれくらいになるだろう。親と喧嘩して家を飛び出し、あてもなく歩いていた俺に、声を掛けたのが智子だった。  俺に行く所がないと察すると、智子は何の躊躇もなく、自らの家に俺を招き入れた。  はじめは、 「なんて無用心な女だ」  とは思ったが、やっと寝床にありつけることと腹ぺこだったことも手伝って、遠慮なくお邪魔することにした。  だが、問題がひとつ。智子はやらせてはくれなかった。  毎晩、一緒に寝てはいるが、俺はまだ智子とやってない。俺が許されているのは、ひざ枕にキス。あと胸を揉ませて貰うくらいだった。  パンツの中へ手を忍ばそうとしても、 「もうダメだよ」  と、頑としてその扉を開いてはくれなかった。  俺の役目といえば、毎日、仕事に行く智子を見送り、用意してくれている飯を食い、部屋でダラダラと過ごし、智子が帰ってきたら満面の笑みで出迎える。それだけだ。それだけで、智子は俺と一緒にいたいらしい。  まったくもって意味がわからないが、飯は食えるし寝床にもありつけてるわけだし、俺はそれでいいと思っていた。  まあ、これが俗に言う「ヒモ」というやつなんだろうな。
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