この世界の救世主

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 俺の生まれた所は、冷たく暗い科学研究室だった。  赤ん坊と呼ばれる形ではなく少年と呼ばれる形で生まれ、その時、近くにいた鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいが、俺の生みの親だと言っていた。  はっきり言って、意味不明である。ひな鳥でもあるまいし、生まれてすぐ目の前にいる者を「親だと思え」だなどできるわけがない。  しかし、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいは、父親づらをしたたま俺に接し続けた。  俺には髪の毛はおろか体毛というものが生えてこない。生まれてこのかた与えられた物といえば、パンツ一枚とセンスの悪い妙なカツラだけ。しかも、歩く時にぴょこぴょこと妙な音がして、非常に耳障りだ。  そんな俺を哀れんだのか、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいは、俺に妹を作ってくれると言った。そんなので俺が喜ぶとでも思っているのだろうか。妹を見て俺が「妹萌えー」とか言うとでも?  冗談じゃない。俺が欲しいのは、誰にも束縛されない自由と、ちゃんとした衣類と、風にたなびくサラサラヘアーだ。あと、この妙な足音を何とかしてくれ。  だが、俺には何も与えられなかった。相変わらずパンツ一枚で、妙なカツラを外すことも許されなかった。
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