この世界の救世主

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 それから程なくして、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいの言った通り、俺には妹が生まれた。  妹には、ちゃんとした衣類が与えられ、カツラも俺のよりはセンスがいい。それだというのに、俺はパンツ一枚。そして新しくブーツを与えられただけだった。  パンツ一枚にブーツて!  なんちゅう出で立ちだ!  こんな姿で、外なんか出歩けるわけがない。  どうやらこの、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいは、俺よりも妹の方が可愛いとみた。  そんなある日、自暴自棄になってしまっていた俺に、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいは、こう言った。 「お前はこの世界を救うために生まれてきたんだ」と。  その時は訳がわからなかったが、詳しく話を聞くと、どうやら俺には特殊な能力があるらしい。  力は普通の人間の何万倍もあり、空も飛べるというのだ。その能力をフルに発揮し、この世界を支配しようとする悪人を倒さねばならないらしい。  俺は今一度、鼻のでかい禿げた科学者らしきじじいに頼んだ。 「とりあえず、この格好だけは嫌だ」と。  しかし、願いは通じることはなく、俺は妙なカツラにパンツ一枚とブーツ姿で、悪人と戦わねばならなくなった。  そう、俺の名前はアトム。  後の世で救世主と呼ばれる男。
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