第一章

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ボクはその日、めちゃくちゃ退屈していた。 ていうか、毎日退屈していた。 こんなボクでも都会で成功したいと夢を抱いて上京したけれど、入社した会社はブラック企業。 居酒屋出向を命じられ、働き始めたら気が付けば自分、1日働きっぱなし。店長にはこき使われて、めんどうな掃除やら何やらすべて押しつけられて。 あ~思い出すだけで腹が立つ! 店長と合わないし、裏の仕事ばかりでこき使われて、売り上げに貢献できないと本社に戻れないっていわれて。 もう無理ってやめた。 根性ナシ? いや、誰でもやめると思うよ。マジでブラックだもん。 いま、失業保険で食いつないでいるから、早く仕事を探さないといけないんだけど、何がやりたいのは自分でもわかんない。 成功したいって、ボクはいったいなにで成功したかったんだ? あ~わかんね~と思いながら、退屈しのぎに渋谷の街をブラブラしていた。 缶コーヒーを飲みながら。 そのとき、あの男が近づいてきたんだ。 「ねえ、ちょっと時間あるかな」 「なんすか?」 「めっちゃおいしい話があるんだよ。暇なら乗らない?」 「おいしい話?」 「君にあるクイズに答えてもらいたいんだ。全問正解すれば50万円!」 「マジっすか。どんなクイズですか?オレ、アニメとかダメっすよ。そうだな。芸能系ならイケるかも」 「いや、食べ物系。ていうか飲み物系のクイズ」 「飲み物?」 「それだよ」 男はボクが手に持っていた缶コーヒーを指差した。 「コーヒー?」 「そうコーヒークイズだ」 ボクは学生時代、カフェでバイトしたことあるから、ちょっとは知識がある。イケるかも! 「やってみます!」 「やった!サンキュー。じゃあ、うちの店に来て。そこがクイズ会場だから」 ほんの暇つぶしのつもりだった。暇つぶしで50万もらえればラッキーだと思っていたんだ。
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