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「着物は苦手?」
こくりと頷いた。
苦しいし、と付け加えたその子に、僕は思わず笑ってしまった。
突然笑われたことに少し怒ったのか、女の子は唇を少し尖らせて顔を背けた。
「いや、堪忍。
馬鹿にしたわけとちゃんねん。
可愛ええ理由やなあ、と思うて」
疑うような眼差しが向けられ、頭をかいて苦笑いした。
「着物着とったって、苦しくならへんよ」
「嘘、苦しいですよ!特にお腹」
少しハリのある声で反論が返ってきて、また笑ってしまった。
「まあ、お腹は人それぞれやけど。
僕が言うのは、ここやね」
昔、そうあれは僕が六つの時、初めて日本に来た日に、オトンが僕にしてみせた風にとんとん、と自分の左胸を拳で軽く叩いた。
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