番外編・袖振り合うも他生の縁

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一年前の一月一日、元旦。 僕は我が家でこたつに入りながらおせちを食べ、まったりしている・・・のではなく、雪が積もった寒空の下、京都の北野天満宮にいた。 事の発端は、 色々と複雑な大人の事情というやつで、今はオトンとは別居して京都に住んでいる、今の僕の母。 天満宮近くに住む母は、毎年正月には天満宮の参道脇で甘酒の出店を開く。 というのも、オカンの職場が酒などを卸売りする会社だから。 そして、毎年のようにそれに人員として駆り出されるのは、僕。 店始めの準備も福袋の準備も、しなければならない事が沢山あるのに、オトンに強制的に毎年連れていかれている。 奥歯をガチガチとならしながら、甘酒の入った鍋をぐるぐるとかき混ぜる。 「惣ちゃん!二つやで、二つ!」 「はいはい」 紙コップに救いとって、お客さんに渡す。 その時は、ついでにやくふごの広告も一緒に渡す。 まあ、こんな寒い中タダ働きやし、このくらいはやっとかんとな。
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