番外編・袖振り合うも他生の縁

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きびきびと働くオカンも、今日は髪をまとめあげて和服姿。 オトンが昔、オカンのためにつくって贈った着物。 「おい」 「あー、もう勝手にしいや!」 オカンがしっしと犬を追い払うように、オトンを追い払った。 「おい」だけで理解できるくらいのおしどり夫婦やのに、なんで一緒にくらさへんのか、昔から不思議やった。 そんなことを考えながら、鍋をぐるぐる、ぐるぐる・・・ 「惣ちゃん、泡立っとるがな」 「え、あ。ほんまや」 「疲れてんの? ちょっと休んでき」 オトンを追い出した時と同様に、屋台の下から追い出された。 することが無くなったので、参道の脇をぶらぶらと歩く。 色鮮やかな和服を来た人がずらりと列をなして参拝しているのを観察した。 あの人、男のくせに襟抜けすぎやろ。 ああっ、あの人は前合わせ左右逆やし。 あの人は帯の色ぜったい間違えてるやろ! 和服を着る人がいる所へいけば、必ず隈無く見てしまい、そして必ずいらいらする。
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