番外編・袖振り合うも他生の縁

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今年から、着付け教室でもやろかな、なんて思案しながらゆっくりと歩いていると、一人の中学生くらいの女の子が石の花壇の上に座っているのが見えた。 肩から袖にかけて、桃色から藤色に変わっていく地に、淡い色合いの花が描かれた振袖を着た女の子は、じっと空を見上げている。 気をはっていない、その子に丁度似合っている振袖。 選んだ人ええ感覚してはるやんと、そんなことを考えながら通り過ぎようとしたその時、 女の子の瞳の奥がゆらゆらと揺れているのに気がついた。 見る見るうちに涙が溜まって溢れだしそうになるのに驚き、気がつけば声をかけていた。 「どないしたん?」 女の子の肩がビクリとあがって、その子は僕を見た。 まだ幼さが少し残る顔をした女の子、中学三年生くらいだろうか。 僕を凝視する女の子にもう一度同じように尋ねると、その子は一層泣きそうな顔になった。 「はぐれたけど、足痛くて、携帯なくて・・・」 泣きそうなのこらえて、その子は小さな震える声でそう言った。
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