2392人が本棚に入れています
本棚に追加
このまま立ち去っても良かったが、何となくほっとけなくて僕はそのこの横に座った。
甘酒の入った紙コップを両手で包んで、遠くを眺めていた。
「天満宮には、合格祈願?」
「へ?あ、はい」
突然話しかけた僕に、少し驚いたようにその子は返答した。
「お正月だから、おばあちゃんの家にお泊まりに・・・」
「ああ、そうなんや。
おばあちゃん、京都に住んではるんや」
言葉の発音からして、関東当たりに住んでいる子なんだと見当ができた。
その子は少し警戒心が取れたのか、肩の力をぬいて「そんなんです」と小さく笑った。
「着物、おばあちゃんに着せてもろたん?」
僕がそう聞けば、その子は少し目を見開いてさっと視線を伏せた。
不味いこと聞いたかな、と眉間にしわを寄せた。
「叔母さん・・・に、です」
そう言って寂しげに笑って、コップに口をつけた。
最初のコメントを投稿しよう!