番外編・袖振り合うも他生の縁

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このまま立ち去っても良かったが、何となくほっとけなくて僕はそのこの横に座った。 甘酒の入った紙コップを両手で包んで、遠くを眺めていた。 「天満宮には、合格祈願?」 「へ?あ、はい」 突然話しかけた僕に、少し驚いたようにその子は返答した。 「お正月だから、おばあちゃんの家にお泊まりに・・・」 「ああ、そうなんや。 おばあちゃん、京都に住んではるんや」 言葉の発音からして、関東当たりに住んでいる子なんだと見当ができた。 その子は少し警戒心が取れたのか、肩の力をぬいて「そんなんです」と小さく笑った。 「着物、おばあちゃんに着せてもろたん?」 僕がそう聞けば、その子は少し目を見開いてさっと視線を伏せた。 不味いこと聞いたかな、と眉間にしわを寄せた。 「叔母さん・・・に、です」 そう言って寂しげに笑って、コップに口をつけた。
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