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「綺麗な逆富士の襟足してるし、着物似合うてるよ」
「え?」
その子は目を丸くして、手を首の後ろに持っていって、そっと触れた。
って、僕なに変態発言してんの!
これ絶対ドン引きされたやろ!
脳内で混乱しながら、様子を伺うようにちらりとその子を見ると、驚いたことにその子は少し嬉しそうに頬を緩めていた。
「お兄さん、凄いですね」
そう言って、満面の笑みを浮かべてこちらを見た。
一瞬胸がドキリと高鳴って、僕は思わず胸を押さえた。
その子は、少し背筋を伸ばして花が咲いたように明るい笑顔を見せた。
「すごく、苦しかったんです。
受験のこと、友人関係のこと、家族のこと・・・いっぱい悩んでて。
でも、なんだか、元気になりました」
へへ、と少し照れたように笑ったその子。
少し前の、花壇に腰掛けて空を見つめていた悲しげな瞳は、もうそこにはなかった。
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