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無意識にその子の頭をぽんぽん、となでていた。
「その年頃やったら、苦しいことはいっぱいやもんな。
君は素直な子や。
そんな子ほど、苦しいこともいっぱいなんやろな」
そう言って、口を閉じた。
真っ直ぐな瞳がじっと僕を見ている。
次に何を言おうかと思案したが、良い言葉が見つからずに、結局ありきたりな「頑張れ」という言葉になってしまった。
しかし、その子は驚いたように目を丸くして、そして瞳の奥をゆらゆらと揺らしながら頬を赤くして微笑んだ。
僕は頑張られへんかったからなあ。
だから、ずっとビクビクしなあかんような人間になってしもうたんや。
未だに頑張られへん人間に、なってしもうたんや。
どうしようもない気持ちになって、空を見上げた。
「・・・頑張って下さい」
突然そんな声が聞こえて、視線を戻せば、顔を赤くしたその子は俯きながら言葉を紡いだ。
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