2392人が本棚に入れています
本棚に追加
懐かしい事思い出したなぁ、と小さく微笑んだ。
確かあの時、あの子のお父さんが
「そんなところにいたのか、──!」
と最後に名前を呼んでいた気がするが、それももう定かではない。
不思議な女の子。
明るく笑う子やった。
去年に受験生やったってことは、合格してはったら天音さんと同じ高校生ってことやな。
頑張ってはるんやろか、と少し目を細めた。
「ほら、やっぱりロリコンやんけ」とけらけら笑うオトンを一蹴し、天音さんをみた。
頬を真っ赤に染めて、口元に手を当てている。
まさか、天音さんまで僕が幼女趣味と思うてはるんやろか!?
それは不味い、非常に。
「ちゃうねん、天音さん!」
必死な僕の声が、お店に響く。
それは、一年前に僕が会うた足を痛めて泣きそうだった女の子が、
今僕の隣に座っている愛おしくて大切な人だと気が付く、数分前のことだった。
【袖振り合うも他生の縁】終わり
最初のコメントを投稿しよう!