Episode 3 『新緑のサスペンス』

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「その報復に、あなたは白崎卓が大麻を所持していることを警察に伝えた」 ホームズさんの問いかけに、宏郎は神妙な顔つきになる。 「タレこんだのは俺だけど、報復じゃない」 「それではどうして?」 「……怖く、なったんだ」 宏郎は俯いたまま、ぽつりと零した。 「最初は良かったんだよ。『宗教は金になる』って話で盛り上がって、そんな時にオークションで薬師如来の掛け軸を見て、『これはいける』ってなって、薬師如来に十二神将だって。だけど、そこから……」 「掛け軸を通して、第三者が――、『暁』が関わってきたわけですね」 冷静に続けるホームズさんに、宏郎は弾かれたように顔を上げる。 「そうして、あなたと白崎卓が考えた幼いような計画は、大麻愛好会である『暁』の手が加わることで、今のような状態になってしまったと。 優子さんを生き神にする計画を立てたのも、『暁』ですね。あなたは命じられるまま、実行役を務めた……」 宏郎は黙り込んだまま、こくりと頷いた。
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