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「どういう、ことだ?」
小松さんが怪訝な声を上げると、國代重が大きく息をつく。
「わたしが話そう。小松さん、申し訳ない。優子はわたしの娘なんだ」
その言葉に小松さんは目と口を大きく開き、陽子さんが「違う!」と声を上げた。
「違う、違うの! 本当は、分からないの!」
「分からない?」
「優子を妊娠する前、私は國代先生に口説かれていたわ。でも、心は動かなかった。
でも、ある日、『君のことは諦めた。だけど、この気持ちを消化させるのに君をモデルに絵を描きたい』って言われたの。それは私も光栄だったし、彼のアトリエに行って、モデルを務めたわ。
リラックスできるようにとお酒を勧められて、不思議な薫りの香を焚かれて、私はだんだん意識が朦朧として、気が付くと彼と同じベッドで寝ていて、朝を迎えていた。
記憶がないのよ。それでも、一晩の過ちだと私の中で割り切ろうとしていたら、その後に優子を授かって……小松と國代、どっちの子だろうってずっと思ってた。
もちろん、小松だって信じたかった。だけど、怖くてDNA鑑定もできなかった。優子が成長するにしたがって、小松にまるで似ていないことにいちいち罪悪感を覚えて、どんどん居たたまれなくて、もう小松とは一緒にいられなかった。
離婚した本当の理由はそこなのよ」
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