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「いやはや、今回はなかなか厄介なことに巻き込まれましたよね」
寺町三条の骨董品店『蔵』は、今日も人に素通りされて、静かに平和だ。
ホームズさんは「どうぞ」とカウンターに座る私の前にコーヒーを置く。
今日、私はバイトが休みなのだけど、カウンターを借りて勉強をさせてもらっている。
ありがとうございます、と会釈をすると、ホームズさんはにこりと目を細めた。
「本当に大変な事件でしたよね」
「ええ、小松さんがこの店に訪れた時から、なんだか嫌な予感がしたんですよ」
続いてホームズさんは私の隣、利休くんの前にコーヒーを置く。
利休くんも、ありがとう、と微笑んで、頬杖をついた。
「大変なのは僕の学校だよ。優秀かつ優良な私立高校で知られていたのに、風紀委員が全員逮捕だからね。学校の中はもうてんやわんや。連日職員会議やPTA会議が開かれてるみたい」
「そうだよね、利休くんの学校は大変だよね」
「まぁ、大変なのは大人たちで、僕たち生徒は、意外に冷静なのもたしかだけどね。『あの支配欲の強そうな風紀委員たちならありえる』とか、『私たちも勉強のしすぎには注意しなきゃね』って、すっかり笑いに変えてるよ」
「たくましい……」
私は感心の息をつきながら、コーヒーを口に運んだ。
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