Episode 3 『新緑のサスペンス』

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「僕はそんなことはしないですし、自分はそうじゃないと信じたいのですが、たしかにその素養はありそうなので気を付けようと思います。 今回の事件に関しては、あの男でしょうか……」 「あの男って?」 「……雨宮議員は、今回の事件が発覚するなり、奥さんに三下り半を突き付けられ、離婚に至ったそうです。そして名字を旧姓に戻し、史郎さんとともに渡米したとか」 「え……」 驚きに言葉が詰まる。 離婚になったのは仕方ないのだろうけど、あまりに迅速な気がした。 「僕は今回の事件、証拠はないですし、直接係わっていないですが、史郎さんが裏で糸を引いていた気がしてならないんです。自分の手を一切汚さず、父親も弟も暁もすべて手駒にしていたのではないかと」 低い声でそう告げたホームズさんに、ぞくりと背筋が冷える。 「まぁ、僕の憶測でしかないんですが」 ホームズさんはすぐに表情を緩めて、対面に腰を下ろした。
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