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「それにしても、あんな賑わいは、夏休みまでないんでしょうか?」
「夏休みというより、その前の祇園祭ですね」
「ああ、祇園祭。もう少しですね」
感慨深さに、私は熱い息を吐く。
祇園祭は私にとって、思い出深いお祭りだ。
「そうそう、夏休みといえば、今年は海外に行かないことになりました」
そう続けたホームズさんに、私は驚いて顔を上げた。
ホームズさんは毎年恒例で、夏休みにオーナーと海外に仕事で行っている。
海外の美術館に鑑定や、近隣のホテルや施設から美術品の買い付けを依頼されているためだ。
「今回はお仕事の依頼がなかったんですか?」
「いえ、今年の夏は父も忙しくなるそうですし、あなたも受験生ですから、そんなに店番を頼めませんしね。今回はオーナーと、僕の代わりに好江さんが行ってくれることになりました」
「好江さんが……」
へぇ、と私が相槌をうっていると、カランとドアベルが鳴った。
顔を向けると、そこには利休くんの姿。
少しうな垂れ気味で、表情も暗い。
「利休くん、いらっしゃい」
「……うん」
利休くんは、ふらふらとした足取りでカウンターに近寄り、脱力するように椅子に腰を下ろす。
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