17227人が本棚に入れています
本棚に追加
/548ページ
「で、司叔父さんもあんなんだし、まともだと思っていた和彦叔父さんを勘当しちゃって、じいさんも少し不安になったのか、父さんを呼び寄せたわけ」
利休くんは頬杖をつきながら、ちらりと横目で左京さんを見る。
「息子の側に住めて嬉しいよ、俺は」
ぎゅっ、と抱き着いて頬をすり寄せる左京さんに、「やめてよね」と利休くんは心底嫌そうに、手で顔を押す。
「僕、父さんのこういうノリがとうにもあれで。東京くらい離れている方が良かったのにさ」
「何を言うんだ。俺は夢に一歩近付いたって、喜んでいるのに」
「夢って、働かずに暮らすことなんだよね?」
「それは夢というより、希望だ。夢はもっと素敵なものがいいじゃないか」
と、白い歯を光らせる左京さんに、私は興味を引かれて少し身を乗り出す。
「どんな夢なんですか?」
「それはね、好江と復縁して、利休と三人で一緒に暮らし始めることだよ」
胸に手を当てて目をきらきらさせながらそう言う彼に、利休くんはげんなりした様子で肩をすくめる。
「ほら、そういうことをまた言い出すから。うちの母さんには、オーナーという大切な人がいるんだからね」
「でも、オーナーはご高齢のおじいさんなんだろう?」
左京さんがそう言った時、利休くんが勢いよく立ち上がって、カウンターに手を置いた。
「だからなんだって言うんだよ。側にいてくれなかったあんたより、僕はオーナーにずっと良くしてもらってきたんだ! そもそも、母さんはジジイが好きなんだよ。自分が少し若い女にまでモテるからって、勘違いしてんな! オーナーは僕のもう一人の父さんだと思ってるんだ」
そう捲し立てた利休くんに、左京さんは目を丸くする。
最初のコメントを投稿しよう!