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「ハク様は、そのような仕事に関する教育を授かる機会に恵まれませんでしたから」
「うむ。あの娘に関しては、小さい時から見てきたわけだし、それは解っている。だが、覚悟の上で来てみれば、どうだ、部屋は整って塵ひとつ無い。待たされもせずに出された食事は美味い。しかも応対してくれるのは別嬪さんときた」
言いながら、ゲーエルーはまた嬉しそうに笑った。
「こりゃぁ、もっと頻繁に来ねばならんなぁ」
「ありがとうございます。そうして頂ければ、ハク様もきっとお喜びになりますわ」
「まぁ別嬪さん、座れ座れ。嬢ちゃんが氷結晶創りに篭っているのでは仕方がない。ちょっと話し相手になってくれ」
では失礼致します、と、応えて、キキさんはゲーエルーの向かいのソファに腰掛けた。
「キキと申します。先年より、砦跡のハウスキーパーとして使って頂いております」
「ゲーエルーだ。ミティシェーリの姐御の護衛役を自認していた」
ゲーエルーの名は、国教会の聖書である『戦史書』にも見ることが出来る。ちょい役だが、勇者の威光に怯えて魔王を見捨て逃亡した、卑怯で小心な近衛兵長として描かれていたはずだ。
目の前に居るゲーエルーは豪放な感じで、国教会に造られたキャラとはイメージが随分と違う。
互いの名乗りが終わった時、三つのグラスとジュースの入った水差しを盆に乗せ、クークラが戻って来た。
「お久しぶりですゲーエルーさん。ジュースを持ってきました」
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