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02.
「どうにも独り身だと、誰かと話せる機会というのが嬉しくてね、別嬪さん」
「キキです。……ええ、わたくしとしてもハク様のお母様や子供の頃を知っている方の話を聞けるのは、貴重な機会だと思いますわ」
「ボクも、ゲーエルーさんの話は好きだよ。外のお話は本当に面白いもの」
「そうかい、そうかい。嬉しいねぇ。さて、じゃぁ……」
ゲーエルーは、自分の来歴を話し始めた。
ハクの母ミティシェーリが、「北の地」で氷結晶を作り始めたのは、最初は趣味のようなものだった。しかし氷結晶には人を魅了する美しさがあり、特に若くて粋がっている奴らがその虜になった。
オレはその頃からミティシェーリの姐御とよくつるんでいた遊び仲間の一人だった。
あの頃は、若かったね、オレも姐御も。仲間たちも。
そのうちに、氷結晶を持っていれば、暑い気候の「下の大地」にも降りられることが解った。その頃には既に、かなりの数の若者が氷結晶を手に入れていた。
若かった俺達は、それ相応に好奇心が強かった。
せっかく得た力だ。使わねば損だと、皆が思った。
氷結晶にのぼせ上がるようなヤツらはいくつかの勢力に分かれてて、まず最初にオレたち、姐御が中心となっているグループが、下の大地に降りることにした。
大人たちは反対したよ。そもそも、氷結晶の流行に対してもいい顔をしていなかった。今ならその気持も解る。結果も結果だったから、余計にな。しかし、当時のオレたちは、大人なんて枯れて萎れていくだけの盛の過ぎた花だと嗤った。大人たちが行くなと言えば、むしろ積極的に出て行く、そんな空気だった。
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