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03.
クークラがグラスに注いだジュースを一息に飲んで、ゲーエルーは続けた。
姐御は、とにかく娘の嬢ちゃんと過ごす時間を取ることが、どんどん難しくなっていった。なんせ下に降りたら難しい問題がいっぱいだった。大人しくしろって言ったって、もともとが粋がっていた若いのばかり。問題を起こす奴はどうやったって起こす。その上、別のグループも下に降りてきていて、連絡すらままならないそいつらが起こした事件を、こっちのせいにされて攻められたりもした。
挙げ句の果てが全面戦争だ。
もちろん、下の大地の人間たちにしてみれば、オレたちは災厄だったのかもしれないが、オレたちにとっても辛いものがあったんだぜ。
姐御はそんなのをまとめるために精一杯で、娘との交流が出来なかったんだ。
嬢ちゃんがどう思っているかわからないが、姐御はそれは後悔していた。心底、後悔していた。オレも相談を受けたから、それは本当だ。
だから、そういう意味では嬢ちゃんが氷結晶を作る能力を受け継いでいてくれてよかったよ。氷結晶作りの手ほどきであれば、姐御も嬢ちゃんとの時間を作ることができた。周りが納得しやすかったからな。
嬢ちゃんは、今、氷結晶創りで工房に篭っていると聞いたが、邪魔してはいけないとオレは思う。
あの娘の創った氷結晶は、オレも一度……うん、見せてもらったことがある。
氷結晶としての質は姐御のそれと同等。美術的な仕上げは、姐御が逆立ちしても敵わないほど上を行っている。作成速度は姐御の方が数段上だったが、今は戦時中ではないから、それはそれで良いと思う。
あの仕上げの丁寧さは、氷結晶創りが心から好きでなければ無理だろう。
オレは思うんだ、別嬪さん。
あの娘は、氷結晶に、母への想いを込めているんじゃないかと。
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