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小さな人形は、ハクが心を込めて丁寧に仕上げてはいたが、所詮は素人がなんの手本もなく作った物。造形的に可愛らしいというほどではなく、モノとして価値があったわけでもない。
この人形では、宿ったクークラはあまり高い知性を持つことが出来ず、喋ることも不可能だった。
ただ、何事にも好奇心を持つ性格はこの頃から顕著で、興味に導かれて危なっかしい動きをするため、ハクは眼を離すことが出来ず、よくクークラの世話を焼くようになっていった。
勇者の目論見は当たり、母を亡くし幽閉され、絶望の淵にいたハクは、クークラを養育するという責任感に目覚め、その精神を持ち直す。
後にハクはいくつか人形を作るが、人形製作の腕は上がらず、どれに入ってもクークラの性格や能力はあまり変わらなかった。
ハクを監視する主教の代が進み、おおらかな性格の二代目主教が来た際に、ハクは思い切ってプロの手により作られた人形を貰いたいと言った。
それはハクが初めて国教会に出した要求でもあった。
二代目主教の命により、等身大の少女の人形が創られ、クークラはそれに乗り移る。
そのボディで初めてクークラは喋ることを覚え、人格らしい人格を得た。
それまで、言葉を持たない子猫を育てていたような感覚だったハクは、その性格が人間の子供のように変化したクークラに大いに驚いたが、以後も変わらぬ愛情を注ぎ、クークラもまたハクを慕い、互いを支えながら生きて行くことになる。
しかし、その出自を勇者は伝えることは無く、クークラ自身、自分がどのように生まれ出たのかをわかってはいない。
クークラは、氷の種族との戦争のおり、下の大地の魔導士たちが団結して創り上げた兵器である。
正確には、兵器の動力として創り出された。
自律式の大砲。巨大なゴーレム。動く小城。
ただのオブジェでしかないそれらに、クークラのような魔導生物を宿らせることで自在に動かし、戦争における兵器とする。
そんな思想の元に、魔導技術系の粋を集めて創り上げられた魔動力。その第一号試作品がクークラだった。
システムとしては、人工的に創られた付喪神。
ただの物品に「大気に満ちる魂」を一時的に宿らせる魔術「アニメート」とも関連がある魔導技術だが、その完成度は比較にならないほど高度で、単純に技術としてのみ見るならば、芸術的、あるいは奇跡的と言ってもいい。
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