◇ 第三章:大気に満ちる魂 ◇

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01.  自分の館の掃除は、一日で終わってしまった。  先日、氷結晶を作ったため疲労困憊してしまったハクを寝かせつけて、看病の体制を整え、後をクークラに任せて帰るだけになった時。  ハクは、超過勤務の二日分を公休で振り替えるようにと、キキさんに言った。  キキさんから何か言ったわけではないから、そういう部分はきっちりしておきたいという性格であるという事を感じ取り、応対してくれたのだろう。  キキさんは、ハクのそういう所を好ましく思った。  しかし。  疲労困憊して寝込むハクを置いて、帰ることをなんとなく後ろめたく感じてもいた。  本来の公休は二日。さらに二日増やして四日間の休み。  館の掃除は終わらせてしまったし、他に特別やっておきたいことも無い。そのため残りの三日間は完全にフリーになった。  それならばと、キキさんは趣味の機織りをするために織り機に向かってみたが、どうも調子が出ない。  集中できない。  やはりハクとクークラのことが気になるのである。  クークラは、氷結晶を作った後に疲労困憊状態に陥るハクを、今まで一人でちゃんと看病してきた。  だから心配するほどのことはないし、自分は所詮アルバイトのハウスキーパー。業務外のことまで背負い込む必要はない。  そもそも仕事と休暇はきちんと分ける。それが自分の性格であり、やり方だ。  そうは思うのだが、感情はまた別である。どうしても二人が気になった。  キキさんは、モヤモヤしたまま過ごすのが、実は人一倍苦手である。  自分の「やり方」に従えば、普通にあと三日間休めばいい。しかしそれだと心の引っ掛かりが取れない。
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