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02.
寝不足。
しかし通常の出勤時刻に遅れること無く、キキさんは砦跡に入った。
「え? キキさん?」
ハクの寝ている部屋をノックすると、驚いた声を出してクークラがドアを開けた。
「おはようございます」
「お……おはようございます。……? あれ? 今日は休みじゃ……?」
「流石に、ハク様が寝込んでいるのを放っておくわけにも行きませんので」
「あ……ありがとうございます」
ハクは、ベッドに臥せってはいたが、眼は覚ましていた。
キキさんが部屋にはいると、びっくりしたように上体を起こそうとする。
「ああ、そのまま寝ていてください、ハク様」
「え? あ、じゃぁ……」
ハクは言われるままに、また伏せた。
「お休みを頂いておりましたが、心配でしたので出てきました。ご迷惑ではないですよね?」
「ええ、ありがたいです。私は寝ているだけなので、クークラにも休むように言ったのだけど、あの子も強情で」
「ボクは別に強情じゃないよ。ハクを放っておいてもどうせ気になるんだから、ここに居るだけ」
クークラの、いかにも「心外だ」と言わんばかりの口調に、ハクは笑いで応えた。
「今日は掃除をする必要はないと思いますので、わたくしも看病の力添えに回りますわ。……それとクークラさん」
「はい?」
「先日、お約束したアニメートに関する書籍を持ってまいりました」
「あ? ホント!?」
クークラが嬉しそうに声をあげる。
「こちらになります」
キキさんが、今日はアニメートを使わず肩にかけていたボストンバッグから何冊もの書籍を取り出した。
クークラが一冊を手に取り、パラパラとめくってみるが、段々と意気消沈していくのが解った。
「何がなんだかよくわからない……」
「パッと見で理解されたら、それこそわたくし、腰を抜かしますわ」
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