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「キキさんも?」
「わたくしも、生まれた時のことは覚えておりませんので、これは自分のマスターたちとの推測になるのですが、悲しみの中で死んだ何人もの子供たちの魂が、強い負の感情のため大きな魂と混ざりあえずにたゆたった末、鶏や狼、ボルゾイ犬、吸血鬼の牙、捨てられた衣服のような物質と集合し、わたくしが生まれたのではないかと」
「大気に満ちる魂は無くならないのですか?」
ハクが不思議そうに聞いた。
「大いなる魂の全てを観測することに成功した者がいないので、その増減を知ることはできません。ただし、大きな魂と小さな魂の総量は、常に増えているのではないかと考えられています」
「それはなぜ?」
「人間を含めた動物の存在があるからです。彼らは魂を分け与えられて生まれてくるのではありません。自ら魂を持って生まれてくるからです」
「それらの魂も、死んだら大きな魂に吸収される……?」
「ええ、ですから推論として、大気に満ちる魂の総量は常に増え続けているのではないかと」
「キキさん。悲しみの中で死んだ子供の魂は、大きな魂とは混ざらないの?」
「激しい感情や、強い意志をもった魂は、他とは混ざりにくいようです。ただし、同じ感情を共有した小さな魂同士は、大きな魂の中で引かれ合い、独自に混じっていくようです。だから大きな魂は、決して均一の状態ではないのです」
「じゃぁ、強い意志を持って死んだ人の魂が、混ざる前に何か別のものに宿ったら、それは生まれ変わりのようなことになるの?」
「分かりません。なぜならば、それほど強い意志を残した魂を、わたくしは見たことがありませんから」
「これってつまりアニメートというのは……」
「クークラさんならば、もうお察しではないのですか?」
「……大気に満ちる魂を、無理やり物品に宿らせる術……」
「ご名答でございます。もっとも、無理に憑依させるので、しばらくすると魂は離れ、元の無生物に戻ってしまうのですが」
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