◇ 第一章:家政婦の弟子 ◇

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 責任者のハクは、もともと掃除が得意でなければ好きでもなく、しかも多少散らかっていてもあまり気にならないという性格だった。  さらに、前述の通り建物の内部には採光する手段がなく、あまり使っていない部屋では、ヒカリムシの照明も申し訳程度にしか灯されない。  暗いおかげで汚れが目立たず、それがますます掃除の手抜きを助長させる。  さすがに物だけは整頓されていたが、塵や埃が溜まっている部分は多かったし、何よりも混凝土(コンクリート)の大敵である湿気とカビ、壁の黒ずみなどに、建物はかなり侵食されていた。  キキさんのアルバイトは、これらの目立たない、しかし深刻な部分の見直しとメンテナンスから始まった。  そしてそれは、キキさんの能力を持ってしても、整備が終わるまでに一冬かかったのである。  バタバタとしていた冬が終わりに近づき、キキさんの存在も砦跡の中にしっくりと馴染み始め、生活のサイクルが安定してきた。  今日は、三日間泊まり込みシフトの最終日である。  手間のかかるカビの予防措置などは前日までに終わっており、今は各部屋の掃き取りや拭き掃除などを残すのみとなっていた。  とある部屋の中で、キキさんは普段と変わらない真面目さで仕事をこなしている。  そして、その隣の部屋。  そこでは、キキさんの魔術の力によりひとりでに動いているモップやはたきなどを、クークラがじっと観察していた。
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