◇ 第三章:大気に満ちる魂 ◇

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「いえ、ちょうど今日、出勤していたのは幸いでした。早速仕事に取り掛かります。ハク様は?」 「私はスヴェシ様をお迎えして、まずは会議室へ入ります。報告義務のある事柄を、書類提出と同時に行いますので、少し時間がかかります。その間に、応接室の準備をお願いします」  ハクが指示を出し終わったのと同時に、鉄の扉をノックする音が砦内に響き渡った。  そこから、事態は慌ただしく動いた。  ハクが国教会の主教スヴェシを迎えに行き、共に会議室に入ると、キキさんは応接室の準備を始めた。  応接室を賓客対応にするとは、ソファーを片付け、ディナー用のテーブルと椅子を用意し、かつ正式な形の饗応の準備をするということである。  報告業務に時間がかかるとハクは言っていたが、準備は全速力で行わなければなるまい。  キキさんは、砦跡に来て二回目となるシャドウサーバントの術まで使い、それを終わらせた。  国教会からの査察が春に来るとは聞いていたが、まだ冬も明けきっていない時期だ。ハクも油断していたのだろう。予定の立っていないバタバタした仕事は、キキさんの望むところではない。  寝不足のせいで眠くなっても来た。  今年は仕方がないが、来年は例え時期を外してきても対応できるよう、準備をしておこう。  晩餐として出すための酒を用意しながら、キキさんはそう心に誓った。
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