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晩餐を終え、キキさんはスヴェシを客間へと案内することになった。
訪問が突然だったため、特別に用意をしていたわけではないが、しかしキキさんの管理に手抜かりはない。国教会の主教を泊めるにも十分な迎賓の準備は常にできている。
キキさんが部屋へと導き、脱いだ僧服などを受け取るときに、スヴェシが話しかけてきた。
「見事なものです。貴女の仕事なのでしょうが、今までこれほど完全な晩餐を受けたことはなかった。この時期には本来使わないはずのこの部屋の支度も。ハクに出来ることではない」
「恐れいります」
「私が、常よりも大分早く訪問した意図はわかりますか?」
言われて、やっと気づいた。
「……わたくしの仕事を検分するため」
「私が見たところ、合格です。それも、想像を遥かに超えた水準で。神品(聖職者)として、見習うべきとすら感じています」
「……」
「ハクは、私を含め敵の多い身の上です。貴女には、彼女の数少ない味方として、これからも支えていってあげてほしい。それこそが、ハクの命を取らなかった勇者様の優しさに通じる道なのではないかと考えます」
「……かしこまりました……一つお聞きしてもよろしいですか?」
「私に分かることであれば」
「ハク様を活かした勇者……様とは、どのような存在だったのでしょう?」
「私が生まれる前に、既に姿をお隠しになった人物です。書物を通してしか、私にも分かりません。しかし……」
「……」
「俗説ですが、勇者様はお酒が好きで、様々な産地の酒を舌に乗せるだけで利き分けたとも言い伝えられています。国教会で祀り上げられている姿よりもずっと人間的な所がおありだったようです」
会話はそれで終わり、キキさんは部屋を退出した。
クークラは嫌っていたが、一廉の人物ではあるようだ。だが、ハクを幽閉することを聖務として行う立場の人間である。
なかなかに厄介なものだ、と、キキさんは思った。
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