◇ 第四章:聖務 ◇

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02.  「砦改め」とは参謀本部内の点検である。砦跡の管理をハクがきちんとしているかどうかを確かめるためのものらしい。  以前は数日をかけて徹底的に行われていたそうだが、二代前の主教が簡略化してしまい、それがそのままの形で続いていると言う。今では、半日で砦跡を見て回るだけになっている。  ハクの先導のもと、スヴェシが砦跡の全部屋を検分し、部屋ごとに許可不許可を判断する。不許可があった場合ハクにはペナルティが課され、何がしかの責務をこなさなければならなくなる。責務の内容は、その年によって違ったと、キキさんはハクから聞いている。  スヴェシの目は鋭く、どんな小さな点も見逃さないよう監視していたが、不許可を言い渡される部屋はついに一つもなかった。従者として付いていたキキさんも、終わった時にはさすがに胸をなでおろした。 「不許可が一つもなかったのは、記録上初めてのことでしょうね」  スヴェシは、点検が終わった後、ハクに言った。 「自分の力でそう出来るよう、精進しなさい」 「……はい」 「では昼食の後、ニの聖務、奉神礼と説教を行います」  その言葉を聞き、ハクは少し首をすくめた。表情には怯えの色が濃い。  昼食を終えて、ハクとスヴェシは会議室へと入った。誰も入ってはならぬと厳命されたので、キキさんは夕食の準備を終えると、私室としてあてがわれている二階の一室で待つことにした。  ハクの表情は気になったが、まさか殺されるわけでもあるまい。これが終わればスヴェシも帰るのだから、精神的なフォローはその後に膳立するしか無い。  そんな事を考えていると、部屋のドアがノックされた。 「どうぞ」 「……失礼します」  スヴェシと顔を合わせないよう、砦改めの時には外に出していたクークラだった。珍しく沈んだ表情で部屋へと入ってきた。 「クークラさん……ハク様が心配ですか?」 「うん……ねえキキさん、ちょっと付いて来てもらっていい?」 「なんでしょう?」 「来てもらえれば分かる……分かります」  クークラについて、キキさんは砦跡二階の一番奥の部屋へと入った。ここも普段は使われておらず、ヒカリムシの灯台も灯していない。今はクークラが持っているランタンが唯一の光源である。  部屋に入る前にクークラに、中では絶対に物音をたてず、喋らないよう誓って欲しいと言われた。  頷くと、何故なのか聞く前にクークラがドアを開けた。
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