◇ 第一章:家政婦の弟子 ◇

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 何も考えていない? それとも、不規則に動くことに何か意味があるのだろうか?  クークラはふと思い立って、また、子供らしいイタズラ心も手伝って、ちょっと試してみることにした。  自分の部屋に戻り、以前キキさんに貰った毛糸玉を持ってきて、モップの端に括りつけてみた。  動いているモップを追いかけて抱え上げると、モップはイヤイヤするように震えてクークラから逃げたがったが、その動きにもクークラは何か愛おしい物を感じる。  糸を付けられて放たれたモップは、しかし自分にそのようなものがくっついているとは理解できず、また前のように掃除を始めた。  毛糸玉はクークラの手にあり、そこからどんどん繰り出されていく糸がモップの動きの軌跡となって残る。 「やった」  クークラは、自分の思った通りの結果になって、小さく歓声を上げた。こうやってモップの動きを目で解るようにすれば、あるいはモップの動きの法則性や理由などが見えてくるかもしれない。  しばらく時間が過ぎて。  クークラは一つの結論に達した。 「やっぱりこの子たちは、考えて動いているわけではないんだ。とにかく、部屋を綺麗にするという命令を実行するのに精一杯で、効率にまでは考えが及ばないみたい?」  部屋中に広がった糸の軌跡を見ながら、クークラはまずそう考え、思わず独り言を言った。 「とりあえず、次にボクが考えるのは、この、モップや箒達を巻き込んで絡まった部分の糸をどうするべきか。これだね」
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