◇ 第一章:家政婦の弟子 ◇

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03. 「それは難問ですね」 「うわぉ!!」  イタズラの跡をどのように隠蔽するか、それを考えていたクークラの後ろに、気配もなくキキさんが立っていた。驚いたはずみで身体をビクッとさせるのは、魔導生物であっても人間であっても同じである。 「キ……キキさん……いつからそこに」 「クークラさんが部屋に戻って、毛糸玉を持ちだしていたのを見ていた時から、変な予感はしていたのですが」  キキさんの表情は変わらないが、やはり怒っているようだ。 「あははは……ご……ごめんなさい……」 「ここが終わっていれば、今回の掃除もおしまいだったのですけど」 「……すみません、自分で片付けます」 「そうしていただければ助かりますわ……お手伝いはいたしませんので、そのおつもりで」 「はい」  ピシャリと言われて、クークラはまず部屋に散らばって絡まった糸の片付けから始めた。  手元に巻き取りながら、しばしば複雑にこんがらかった部分に頭を悩ませるが、しかしキキさんにせがんで貰ったものでもあり、その見ている前では、切ってどうにかすることも出来ない。  悪戦苦闘するクークラを、キキさんは入口付近でずっと見ながら、ふと口を開いた。 「クークラさん、仕事をしながら聞いてもらいたいのですが」 「はい?」  怒られるのか、もっと手際よくやれないのかと文句を言われるのか、そんな予感が頭をよぎり、クークラは身を固くした。
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