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「「誰に?!」」
俺と公平は声を揃えて目を見開いた。
麻琴は特段驚きもせずに腹立たしいのか、眉間にシワを作った。
「知らない男子!封筒に名前無いし、汚い字で宛名書いてるから、絶対男よ!入学してから時々机の中に手紙入れられてるの!勝手に人の机を漁るなんて最っ低よね!学校で棄てると読まれるから家に持ち帰って燃やしてやってるけど!」
〈麻琴……それは[ラブレター]〉
俺と公平はギリギリと歯軋りをして空を睨み続ける麻琴の姿に口を閉じた。
「あんた達……学校は?」
いつ部屋から出てきたのか、寝惚けた姿で立つ母の声で俺達は『はっ!』として時計を見た。
「遅刻する!」
「芽衣さんおはよ!」
「芽衣さん、いってきます」
尽かさず母の手を握ろうとする公平を怒突き、襟首を掴んで連れ出した。
走って登校し、ギリギリ始業チャイムに間に合うとふと公平が思い立ったように口を開いた。
「麻琴、留衣の飯食ってんのに貧血なのか?」
ああ、それは俺も気になった。
「だって、留衣のご飯、量が多いんだもの」
?
「……だから、太ったのよ」
?
「もしかして、ダイエットしてんのか?」
〈ぷふっ!〉と吹き出す公平を麻琴は「悪い?!」と睨む。
「なんで太るんだ?母も公平も太らないぞ?」
「芽衣さんは太らない体質だろ。留衣もそうだし、俺はそれなりに運動してるしな」
笑いを堪えながら公平が答え、麻琴はぷっくりと頬を脹らませて拗ねる。
「昔、雅ちゃんも太ったじゃないか」
と続けるから思い出した。
だから雅ちゃんの為に食事を制限した事がある。
「んじゃ、麻琴にはダイエット食用意してやるよ」
そう告げるとまた二人はビックリした顔で俺を眺めてきた。
何か悪い事でも言ったか?
───授業が始まった。
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