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休みとは学校のない日。
俺にはそういう感じでしかない[休み]は家事を優先、いや、母の世話を優先させられる日だ。
「ねぇ、これ誰?留衣と芽衣さんと一緒に写ってる人」
G.Wという連休の初日から、俺は家中の掃除をしていた。
前もって何処から始めて終わらせるのか寝ながら考え、休日の食事のメニューを適当に並べてどの日にどの料理を出すか思案もして……主夫のごとく順調に過ごし始めていた。
「どれ?……ってか、勝手に見んな!」
雑巾を片手に開いたままのドアから自分の部屋に顔を出し、デスクに並べてある写真を覗き込み突っついている麻琴から写真を奪うと、麻琴は不機嫌そうな顔をして睨んできた。
「母の親友の北条雅さん……結婚して、名字変わったけど」
「ふーん……」
ため息を吐きつつ答えてやると今度は興味のない素振りで携帯端末をいじりはじめた。
相手をしてやる気もないので掃除に戻る。
「あと一時間くらいかな……急ごう」
リビングダイニングの床を拭いていると部屋に1人でいることに飽きたのか、麻琴はリビングのソファーにやって来て膝を抱えた。
「ねぇ芽衣さんは何時帰って来るの?」
「……出版社で打ち合わせして、大事な用事を済ませてからだよ。これ三時間前にも言った……公平も彼女とデートでいねぇし、母がいなくちゃここに居てもつまんないだろ、帰れば?」
前日、母は出掛ける用事があると告げると公平は珍しく朝から来ないでいる。
それでも麻琴は朝からやって来て、母と朝食を済ませてからずっと居着いていた。
「俺、買い出しに行かなきゃなんないから、麻琴、もう帰れよ」
再び帰宅を促すと麻琴はぶぅたれた顔で膝を抱えなおした。
雑巾を片付けて買い出しのために冷蔵庫の中身を確認していると「……追い出さなくてもいいじゃない」とボソボソと抗議の声が聞こえた。
麻琴は自宅に居たくないらしく、外出先にウチを選ぶ。
単純に母に会いたいがために来るのだろうけど、来ても特に何かをするでもなく、勉強道具を持ち込んで黙々とやっている時もある。
「なんかー、留衣楽しそうね。何かあるの?」
俺の素っ気ない態度が不満なのか、麻琴はふいに問い掛けてきた。
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