11月・母親至上主義!

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部屋の出入口には城崎と公平と麻琴が顔色を青くして並んで立っていた。 「帰るぞ!」 「城崎さん、早く車!」 「えっ?!ちょっと、芽衣ちゃん?留衣?!」 慌てた様子で能見の声が追い掛けてくる。 俺と母は3人を促して事務所から飛び出した。 城崎の車に母を押し込んで、追い掛けてくる能見に振り返ると、 「母は俺の母親だ!母に近付くな!!」 と言い残して車に乗り、城崎を急かして発車させた。 「そんなぁ……留衣……それって……」 能見のボヤく声は届かなかったけど、走る車の中で母は可笑しそうに腹を抱えて大笑いし始めた。 釣られる様に城崎も声を押し殺して笑う。 何が可笑しいのか? 後部席で母を挟んで座る公平と麻琴がため息混じりに呟いた。 「「マザコン」」 「治せるもんなら治せよ」 「全くよ……治してもらわなきゃこっちが迷惑よ」 耳に届く言葉に俺は〈ふんっ!〉と鼻息で返した。 治してなんかやらない! 俺にとって母は唯一、俺の母親なんだ。 母の笑顔を守るためなら、俺は何だってしてやる! 親父だって蹴散らしてやる! 〈マザコン上等だ!!〉 俺は少し腫れ上がる頬を膨らませて助手席に座り続けた。 帰宅後、しっかり遅くなった夕食を作り母と(公平と麻琴と)笑顔で食べた。 翌日から順次戻ってきた試験結果はいつも通り散々で、呆れる母にまた殴られた。 俺の部屋には本棚を備え付けた机がある。 そこには母の個人イラスト集と能見の写真集を並べて入れてある。 だって、やっぱり俺はアイツの撮った『lover´s』が気に入っているから。 だから、幸せそうなその写真を眺めて俺は眠っている。 撮った奴は変態だけどな。 ~ fin ~
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